レーズンバター

0624

昔読んだ江國香織のエッセイの中に、

ある飲み会でメンバー全員がレーズンバターが好きなことが分かり、
今から食べに行こうと盛り上がったという話があった。
しかし、いくらレーズンバターが好きな人間であろうと、

レーズンバターを目当てに飲みに行くことはない。
いくつものバーに電話をかけ、レーズンバターの有無を訊くことを繰り返し、
ようやく赤坂のバーで「レーズンバターに自信あり」というところを見つけることができた。
自信があるというだけあって、そこのレーズンバターは絶品だった、という話。
エッセイ集の一編だったが、そのエピソードが一番心に残っていた。
バーに日常的に行くような大人が集まって子どものようにはしゃぐ姿が

とても楽しそうだったからかもしれないし、
それほどまでに美味しいらしい、レーズンバターがどんな食べ物かとても気になった。
レーズンが練り込んである、紫色のバターなのだろうか。
レーズンにバターを塗って食べるのだろうか。
しかし私が普段行くような飲み屋にレーズンバターなんて粋なものはなく、

あこがればかり募る、そんな食べ物だった。
そして、先日行った心斎橋のスタンディングバーの黒板にようやくそれを見つけたのだ。
カウンターにくるまでの5分間、口に合わなければどうしようと緊張を抱えて待ったそれは、
バターの中にレーズンがごろごろ入っていて、クラッカーが添えられていた。
こってりとしていて、あまじょっぱくて、口の中でゆっくり溶かしながら、
とても美味しいと思った。

「自信あり」と言う程のレーズンバター、いつか私も舐めながら、
自分も大人になったなあと子どもっぽい時間に浸りたい。

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